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閑話15「僕勇者です(5)」

僕は、勇者ではなかった。
なんでもない、何の力も持たない、ただの人間だった。





はるか遠い昔、僕は勇者と呼ばれていた。
だが僕は逃げた。
勇者という称号の重みに潰されたのだ。

逃げていた僕は、魔王が世界に必要な存在だと知る。
そして僕は魔王になろうと決意し、魔王城に赴いた。
だが僕には魔王になる資質も無かった。

僕は、勇者にも魔王にもなれない、凡庸たる存在だった。
あいつが僕に引導を渡さずとも、そのうち否が応にも知ることとなっただろう。

勇者という肩書きから逃げ、
死したる魔王の跡も継げず、
ただ道行く旅人に案内する、ただの街人。
それが、僕にお似合いの立ち居地だった。

だが、そこは僕の居場所ではなかった。

街人という立場も僕が選んだ結果ではなく、所詮成り行きで収まっただけの事。
僕は選択してはいなかった。選択させられていたのだ。

だから僕は初めて選択しよう。
「この街を出る」と。
僕ももう若くは無い。どこかでひっそりと暮らそう。
それが、何のコマンドも無い僕にできる選択だろう。





僕が街を出てしばらくして、街が炎に包まれた。
どうやら魔物が城と街を襲っているようだった。

最近、魔王が復活したという話は聞いていた。
真の勇者たるあいつが新たな魔王を討伐するため再び旅立ったことも知っている。
魔物は、おそらくあいつを斃すために差し向けられた刺客だろうか。
だとしたら、入れ違いだ。あいつはもういない。

そして、僕にとってももはや入れ違いでしかない。
僕はあの街、あの城から出たのだ。
もう僕とあの街を繋ぐしがらみは無くなっている。
あの街がどうなろうと、僕には関係ない。
きっと城の兵士が退治して一件落着だろう。

そして、僕は…

僕は、巻き上がる白煙に背を向けた。



………





建物が崩れ落ちる。
見慣れた風景が赤く染まる。
怒号と悲鳴が響き渡る。

無我夢中だった。
何も考えていなかった。
考えるいとまなど無かった。

僕は、丸腰のまま街に戻っていた。

街には見たことも無い魔物が跋扈している。
新たな魔王の、新たな魔物だというのか。

周囲を見る。
街人たちが魔物に蹂躙されている。
何故兵士は助けてくれない?何故遠巻きにうろついている?
まるで、それが役割だといわんばかりに。

僕は、しがらみを振り切ったはずだった。
街から出ると、そう選択したはずだった。
しかし僕は、ここに戻ってきた。

理屈じゃない。

僕は、僕の想いにただ従った。

僕には、どうしても見過ごすことができなかった。

僕は、もう逃げたくなかった。だから選択したんだろう?

だから、戻って戦うと選択した。

僕のコマンドに、ようやく「たたかう」が現れたのだ。





ドスッ!

僕の背後に、何かが刺さるような音が響く。

振り返るとそこには、一振りの剣が刺さっていた。
何故いきなり剣が?
僕は剣を手に入れるも、ただそれを見つめるだけで呆然としていた。

いずこからか、声が聞こえる。

「ぶきやぼうぐは、そうびしなければいみがないよ!」

その声は、聞き覚えのある声だった。
よく仕事帰りに飲み明かした仲。
僕が街を出ると決意したときにも、相談相手になってくれた、あの男。

僕は我に返り、剣を装備した。
いつの日からだろう、剣や鎧を装備しなくなったのは。
いつの日からだろう、この感覚が失われたのは。

武器や防具は、装備しなければ意味が無い。





城と街には大きな爪痕が残るも、なんとか魔物は撃退した。
僕はボロボロになりながらも、生き延びることができたようだ。
僕に剣を渡してくれたあの男も助かっていた。

男は僕に語りかけた。

「勇敢なひとだ。」

やめてくれ。僕は何も考えていなかった。無我夢中だった。
勇敢などではなく無謀だった。ただ、それだけだ。

「だけど、立ち向かっていったのはあなただけだ。私も逃げるだけだった。」

確かに街の人から注意を逸らそうとはした。
男が剣をくれたからなんとか戦えた。
でも、それだけだ。
僕は、ただの人間だ。何の力も持たない、ただの―

「あなたは勇敢なるひとだ。あなたはただ役割に沿った行動しかできない他の者とは違う。
 街人はただ逃げ惑い助けを求め、兵士は戦うでもなく慌てふためくのみ。
 そう、まるでそれは『街が襲われた時の反応』を一通り演じているようなもの。」



「あなたもこの街を出たとはいえ、街人の一人だった。
 だがあなたは違った。魔物に敢然と立ち向かっていった。
 あなたは役割に縛られるような存在ではなかった。」

…僕は…

「そんな人のことを、なんて呼ぶのか、あなたは知っていますか?」

…僕は…ただの…

「勇敢なる者…『勇者』ですよ。」





あいつが旅立って、幾許かの時が流れた。
しかし魔物は一向に減る気配を見せない。
あいつが魔王を倒したという知らせも無い。

「ぶきやぼうぐは、そうびしなければいみがないよ!」

あの男は今日も仕事に精が出ている。
僕とは違い、表情も晴れやかだ。
きっとあの男の居場所はここなのだろう。

僕は、悩んでいた。

結局この街に戻っては来たものの、やはり居場所ではないと感じる。
それは僕が『勇者』だからなのか?
いや違う。あの男は僕のことを『勇者』だと言ったが、真の勇者はあいつだ。
僕は勇者じゃないんだ。それはもう何十年と思い続けてきたことだ。

酒場で、久方ぶりにあの男と呑んだ。

「魔王、倒されませんねぇ。
 あの事件以来、この付近も魔物が出るようになって、危険も増えましたね。」

確かに魔物は人々を脅かすが、それと同時に経済を動かす動力源でもある。
ある程度は魔物がいるほうが、いたほうが良いのではないのか。

それに、あいつが…
勇者であるあいつがいずれは魔王を倒して、凱旋するだろう。

「それなんですがね…」



「あの人…勇者じゃないですよ。
 あの人はかつての魔王を倒してなどいませんよ。」

…何を言っているんだ?泥酔しているのか?

「ふふ…私にはわかるんですよ。少なくともあの人が魔王を倒していないことは確実です。」

何故言い切れる?

「ご想像にお任せしますよ。」





いったい、何が言いたかったのだろう。

あいつが勇者じゃないだって?あいつは昔の魔王を倒してはいないだって?
何故そんなことがわかる?

あいつは僕に「魔王を倒したのは僕だ。僕こそが真の勇者なんだ。」と言った。
そう言っただけで、証拠がないということなのか…?

そして、あの男は僕のことを『勇者』だと言っている。

僕に、どうしろと言うのだ…?

僕は、何の力も無い、ただの人間…

僕は、勇者という称号から逃げ、魔王になる器も無い、
「ようこそ○○の街へ」と道行く旅人に言うのがお似合いの、普通の人間…

僕は…



僕は………







…というわけで、今回の記事は、

僕勇者です。(続き書いて下さる方募集) 「ペン君流ことわさ日記。」
僕勇者です(2) 「煩悩是道場」
僕勇者です(3) 「北の大地から送る物欲日記」
僕勇者です(4) まおうではありません 「マボロシプロダクト」

の続きを想定して書きなぐってみました。

本当はもうちょっといろいろ考えてからやろうと思ったのですが、
告知:僕勇者です。(続き書いて下さる方募集) - ペン君流ことわさ日記。の締切についてにて、
本日が締め切りだということなので、取り急ぎ書いてみました。

締め切り近いということで、やや発展性が無いような展開になってしまいましたが、
やろうと思えば次に繋げることも不可能ではないかな?


とりあえず、先人たちのクオリティを保てているか、自信はまったく無い…

テーマ : お話 - ジャンル : その他

コメント

No title

グッジョブ! まさか書いてくれる人がいるとは思わなかった。

No title

ありがとうございます!感激です・゚・(つД`)・゚・

si-no さんをはじめ、これまで書かれた方々は新たなる展開や視点を創造しておられる方たちばかりで、私にはそんな創造力が無かったものですから、今までの設定を利用させてもらったまでなんです。
これまでの流れがあってこそ、あんな内容になったわけです。
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